甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症
まず初めに、甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)と甲状腺中毒症(thyrotoxicosis)の違いをご説明します。
甲状腺機能亢進症とは甲状腺の働きが亢進した状態を示し、甲状腺中毒症は血中の甲状腺ホルモンが過剰な状態を示します。
甲状腺機能亢進症では血中の甲状腺ホルモン値は上昇しますので、甲状腺機能亢進症は甲状腺中毒症に含まれます。
一方、甲状腺の働きが亢進していなくても、無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎などで甲状腺が破壊され甲状腺ホルモンが血中に漏出することによって甲状腺ホルモンが過剰な状態(甲状腺中毒症)が起こりえます。これを破壊性甲状腺炎と言います。
破壊性甲状腺炎は甲状腺機能亢進症と異なり基本的には自然に軽快します。つまり甲状腺機能亢進症としっかり鑑別して、抗甲状腺薬を使用しないことが重要です。
甲状腺ホルモン高値=なんでもかんでも抗甲状腺薬、ではないということですね。
甲状腺中毒症のうち20-30%程度が破壊性甲状腺炎と言われていますが、これらの患者さんをきちんと見分けることが非常に重要です。
我々内分泌代謝科の専門医は、自覚症状(前頚部の痛みの有無)や触診、超音波検査所見、甲状腺ホルモンのバランス(FT3/FT4比)や甲状腺自己抗体(抗TSH受容体抗体、抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体)から甲状腺機能亢進症と破壊性甲状腺炎を見分けますが、区別がつきにくい場合は総合病院でアイソトープ検査をお勧めする場合もあります。
診察と検査の結果、甲状腺機能亢進症と診断された場合は治療が必要です。甲状腺機能亢進症の治療には薬物療法、放射線内照射療法、手術療法があります。